12歳からの読書案内(金原瑞人・監修/すばる舎)★★★★★

12歳からの読書案内
子供もいないしティーネイジャーでもないのに、なぜかわたしが自分のために買ってしまいました。だってここに紹介されてる100冊の本のセレクトが新鮮なんだもの!
ふつうこういう読書案内って、夏目漱石とか太宰治とかの「名作」が必ず入ってるもんでしょう(この本のそばにあった同系統の本にはやっぱり入ってた)。それがこの本には一切ない。そりゃたしかに「名作」は読めるなら読んだ方がいいに決まってるが、これほど読みやすい小説が氾濫している時代においては、決して読書の「入り口」にはなり得ないだろう。ここで紹介される本は「大人が子供に読ませたい本」ではなく「現在、ティーネイジャーが楽しんで読める本」を基準に選んである。しかも幅広い年代が楽しめる素敵な本ばかりだ。
私の好きな作家もジャンルを問わずたくさん紹介されている。あさのあつこ乙一秋山瑞人舞城王太郎桐野夏生角田光代佐藤多佳子森絵都三浦しをん川上弘美金城一紀荻原規子藤野千夜梨木香歩町田康……などなど挙げるときりがないが、ね?いいセレクションでしょ? ライトノベルもたくさん紹介されてるし、ノンフィクションでもわたしの好きな『調理場という戦場』をはじめとしていろいろなタイプのものが紹介されてる。このほか絵本や短歌など取り上げられた本のジャンルは幅広く、よく100冊に収められたなぁと感心してしまう。一冊一冊に丁寧な紹介がされていて、私自身読みたい本が増えてしまった。
ここに紹介されてる100冊の本が、中学や高校の図書室にあったらいいのに。id:seiitiさんの図書室ならここに取り上げられた本のうち小説は8割くらい揃ってそうで生徒が羨ましいけど、そんな図書室がある学校なんて少ないでしょう。わたしの通ってた学校なんて古い本ばっかりだったし、当時は情報を得るツールも少なかったし、なかなかいい本に巡り会うチャンスが少なかったように思う。文部大臣はゆとり教育を反省してる暇があるなら、この本を全国の中学校・高校の司書さんに送りつけてほしい。読書のプロ中のプロが吟味した100冊なんだから間違いないよ?
しかしそれにしても、この本誰が買うんだろ? いや、このブックガイドは本当に素晴らしいんだよ? 現時点でティーネイジャーを対象にしたブックガイドとしては間違いなくナンバーワンだし。でもティーネイジャー自身が手に取りそうな雰囲気ではないし、大人が買うにしたってよっぽどの本好きじゃないと買わないだろう。たいして自分は読まないのに子供に読ませる本を探してるような人だったら、紹介されてる作品のセレクト的にこのブックガイドを選ぶことはない気がするし。う〜ん。というか最初から買い手市場の小ささはわかっているのに、このやる気のないタイトルとカバーはどうにかならんのかと、一応出版社に突っ込んでおきたい。
いや、それにしても本当に素晴らしいブックガイドでした。