夢のなか―慶次郎縁側日記(北原亞以子/新潮社)★★★

夢のなか―慶次郎縁側日記
働きもせず暴力を振るう男と別れられない女、妻子ある男を追いかけ回す女、夫の本当の気持ちが知りたくてひと芝居うつ女…江戸も平成も男と女のいざこざは変わらんもんですねぇ。
一番<江戸の人情話>っぽいのは「師走」かな。年末に追いはぎにあってしまったおばあさんの物語なんだけど、これがいい話なんだよね。本当に江戸時代にはこんなふうに情の厚い人がゴロゴロいたんだろうか。現代からしたら夢物語のようだ。今なんて犯人に説教しようもんなら3秒でズドンとやられそうだもんなぁ。自分の美貌に自信があるばかりに婚期を逃してしまったおれんの物語「ふたり」も切なくて、とても好き。
江戸を舞台にした8つの物語はどれも、ちょっと切なくて心が温まる、あまり時代小説は読んだこと無いんだけど、これをきっかけに読んでみようかなと思った。