エンド・ゲーム 常野物語 (常野物語)(恩田陸/集英社)★★★★

エンド・ゲーム 常野物語 (常野物語)
一番はじめの常野物語である「光の帝国」が出版された1997年から8年後である去年、6月に「蒲公英草紙」、そして同じ年の12月に3作目であるこの作品が出版された。長いブランクを置いて、なんだかシリーズ化っぽくなってきております。
この作品では一族そのものの変化、そしてそれを取り巻く現状が描かれる。
主人公は常野一族の血を引く母と娘だ。母は一族の掟を破って同じ常野の男と結ばれ、娘・時子を産み落とした。ふた親から常野の血を受け継いだサラブレッドである時子は、自分が不思議な力を持っていることは自覚しながらも一族から離れていたため、常野に関わることなく大人になっていた。ところがある日母親が「裏返され」、あせる時子のもとへ、常野一族と、敵対する「あれ」が同時に忍び寄る……。
<しまった>り<しまわれた>りしてたところが、本作では<裏返した>り<裏返された>りしているのは、単なる表現の違いではない。これまでは一族内部、もしくは個人の問題が主立っていたが、本作「エンド・ゲーム」では、常野一族にとってオセロのように文字通り「裏返す」か「裏返される」かの一族の存在を懸けた過酷な闘いのなかで、ひとつの家族が翻弄される物語のだ。
ひとつの作品としてみれば最初から最後までサスペンスフルで完成度も高いし、ラストもいい。シリーズ全体から見れば一族の大きなうねりの真っ最中を描いた作品なので何とも言えないが、これからも続きが出るとすれば、全体から見てひとつの山場となる作品ではあると思う。
ま、シリーズものとはいえ、<常野一族>であること以外は何もリンクしていないので、読者が忘れた頃くらいにぽつぽつ出てくれると嬉しいなぁ、と思える不思議なシリーズものではありますね。今後も楽しみです。