ほとんど記憶のない女(リディア・デイヴィス/岸本佐和子・訳/白水社)

ほとんど記憶のない女
変な小説、発見。
アメリカ小説界の静かな巨人、と呼ばれる著者の短編集。日本での翻訳は初めて。もちろん私が読むのもはじめてだ。
この小説を人に説明するとき、どういう言葉を使えばこの小説の不思議さを上手く伝えられるんだろう。
既視感を伴う日常のひとコマがこの小説家の手にかかると、クールでひねくれた、そして静謐な物語になる。かといって乾いた印象はない。それどころかけっこう人間味あふれる小説なのだ。そして読み返せば読み返すほど、味が出てくる。個人的には男と女の諍いやすれ違いを描いたショート・ショートのアイロニックさがけっこう気に入っている。
やっぱ上手く説明できないが、気になった人は書店でちょっと立ち読みすることをオススメする。ほとんどがかなり短いショートショートなので2〜3編すぐに読めるから。
それにしてもハンガーにかけられた服の上におっぱいが浮いてるこのカバーイラスト、いいですね。目を引くし、中身の小説の何ともいえない奇妙な雰囲気にぴったり。