ワルボロ(ゲッツ板谷/幻冬社)<15>

ワルボロ
名前だけは知ってたが、この人の著作を読むのははじめて。この作品は著者初の小説だ。といってもかなり自伝的な色合いが強いので、これまでの彼のコラムのファンもすっと入っていける世界だろう。しかしというかやっぱりというか「小説」と名乗っているにもかかわらず本屋ではサブカル系コラムの棚にしか置かれてなかったが……。
岸和田に中場利一、立川にはゲッツ板谷!? スラム街を思わせる立川の町でひたすらケンカに明け暮れる主人公と5人の仲間たち。家族、メンツ、友達、恋…あまりにも多くの問題に囲まれながら、でも6人でいれば笑っていられる。こっぱずかしくなるほどにストレートではあるけど、初めての小説としては驚くほどに完成度が高いように思える。
6人のキャラクターがいいんだよね。あとで彼のコラムなどを読んだかんじからすると、たぶん小説だから誇張してるわけじゃなくて本当にとんでもなくアホで面白い奴らだったのだろうけど、面白い人間がまわりにいればそれだけで面白い文章が書けるというものではない。仲間同士で馬鹿言ってるコミカルなシーンと、それぞれが家族のことで悩むシリアスなシーンとのバランスがすごくいい。そこに読んでるこちらがあきれるほどに激しいケンカのシーンがばんばんはさまってくる。ハラハラしたりじんとしたりくすくす笑ったりしながら一気に読める小説だ。
これはまだ中学生の頃の話。ラストには続編を書く意思があるように解釈できるので、岸和田愚連隊と同じくシリーズ化になるのかも。続き出たら、買います。