あなたのことが、いちばんだいじ(盛田隆二/作品社)<14>

あなたのことが、いちばんだいじ
幻のデビュー作を含む著者初の短編集。著者あとがきによると高校時代に書いた「糠星」から最新作「折り紙のように」まではなんと34年もの月日が流れてるそうで、さすがにひとつの短編集としてはあまりにもばらばらな印象。
やはりというか当たり前だが近年の短編が完成度が高い。一番好きなのは表題作だ。主人公は私立探偵。ある女性から夫の浮気調査を頼まれたところ、同時に別れた妻から娘が行方不明になったと連絡を受ける。浮気調査をするかたわら娘の行方を調べる主人公は、とんでもない光景を見てしまう……。短いながらもきっちりオチがついてて、かつタイトルが胸に沁みる。
まぁ量産するタイプの作家ではないのでしようがないのかもしれないが、せっかくの初の短編集ならこのレベルの短編をあわせてひとつにしてくれたらもっと良かったんではないかなんて読者的には思ってしまいます。だって文庫とかかなり売れてるみたいなのに、なんかこの新刊は黙殺されてる…それがさみしい。