みんな一緒にバギーに乗って(川端裕人/光文社)<30>

みんな一緒にバギーに乗って
この人の作品読むのは初めてだったりします。区立のとある保育園を舞台に、さまざまな保育士たちの姿を描いた連作短編集。
マッチョだが意外に針仕事が好きだったりするフェミニンな雰囲気が人気で、不器用ながら熱心に仕事に取り組む田村竜太。職業を理由に彼女の父親に嫌われても、理念と野望を持って保育士という仕事に誇りを持つ、とくに女の子からは「王子さま」キャラとして人気な秋月康平。合コンにいそしむもいまだ彼氏なし、子供たちの持つ自由な発想力が大好きだが、保育士に本当に自分が向いてるのかどうか悩み中の中島ルミ。以上が新人3人組。そしてベテランで保育士のなかでもリーダー的な存在だが、実際に自分に子供がいないことで奇妙な心もとなさを秘めている大月恵子。この4人を視点に、保育園内でのさまざまなトラブル、保育士のやりがい、保育園のありかた、自分の将来などに悩む保育士たちの姿が描かれる。後半はいい意味でもわるい意味でも保育園をひっかきまわすタイプの先生が登場し、田村竜太は彼を尊敬するのだが、変わってしまった園内の雰囲気にとまどいを覚え…。
ふだん全く接することがない世界なので、興味深く読んだ。いまだに男性保育士ってめずらしいんだなぁとか、擦り傷くらいでも保育園に文句を言う親っているんだなぁとか。でももし自分に子供ができたらお世話になるところなので、現実にもこの小説のように熱心な先生が多いといいなと思う。
小説としても全体のバランスが良くていいと思う。登場する保育士たちの、やっぱり子供が本当に好き、という根っこにある共通部分が、この物語を優しくみせる。他の作品も読んでみたいです。