ララピポ(奥田英朗/幻冬舎)<23>

ララピポ
奥田英朗最新刊。
上の階に住む住民のセックスを盗聴するのが趣味のフリーライター、風俗専門のスカウトマン、AVに一度出演したのをきっかけに性欲に目覚める主婦、デブ専裏DVD女優、官能小説家…人間の基本的な欲望・性欲に最も近い「現場」で働く彼らの悲哀を描いた連作短編集。
帯には「最新爆笑小説、誕生!」と書いてあるけど、笑えないねぇ…ちょっと悲惨で。ま、もともとこ著者は『イン・ザ・プール』みたいに人間の悲哀をユーモラスに描くのが得意な人で、この作品も彼のスタイルの王道だからもちろん面白いんだけど、爆笑はないだろう、と出版社につっこみたくなる。
ホント、ここにあるのは悲惨な物語ばかり。読んでてへこみそうになるのをギリギリ引っ張ってぐいぐい読ませちゃうこの人の筆力に改めて感服。それでもAV出演を機に目覚めちゃった主婦の話はイタかったなぁ…。奥田英朗はぱっと頭の中にイメージが浮かぶようなわかりやすい描写が上手いから、読んでいて生理的に辛かった。
一方で痛快だったのは裏DVD女優が主人公でタイトル「ララピポ」の意味が明かされる「GOOD VIBRATIONS」だ。主人公の小百合は地味なデブ。一見男に全く縁がないように見えるが、実は冴えない男を引っ掛けるのが得意。次々と男を部屋に連れ込んでセックスする…こっそりとカメラをまわしながら。そしてその映像を裏ビデオ店に売った金でいつかマンションを買おうと企む図太い女だ。この話に出てくる男がみんな笑っちゃうくらいサイテーで、仕事もできないくせに小百合の前では威張り倒す。小百合は自分の支配下にあるとばかり思ってる男たちの悲喜こもごもが、実は小百合の収入になってるっていう設定がめちゃめちゃ面白い。
奥田英朗お得意のコースアダルトバージョン…てところだろか。出てくるやつらみんなイタイけど、一気読みできる楽しい小説です。
あとカバーでほとんど隠れてますが、浮世絵っぽいイラストの表紙がステキです。