砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない (富士見ミステリー文庫)（桜庭一樹／富士見ミステリー文庫）

昨日読んだ『少女には向かない職業』がやたら面白かったので、続けて買ってみました。

この小説と『少女には〜』は双子のようだ。とても良く似てる。主人公は田舎に住む中学生で、少しばかり大人びてる少女。そんな主人公の日常を浸食する不思議ちゃん系少女。ともに複雑な家庭環境あり。まるで決められたかのように、ふたりは非日常的な世界へ巻き込まれていくー。こんなふうに基本的な設定はかなり酷似してるのに、受ける印象が異なるのは、著者がラノベ用と普通の小説用に雰囲気を分けてるせいだろうか。そこは上手いなぁと思う。

前半は「わたしは人魚」と言い張る不思議ちゃんの暴走がいかにもラノベっぽくて『少女〜』ほどにはのめり込めないなぁ…なんて思って読んでたんだけど、それが一転、後半がすごくいい。主人公・なぎさが、不思議ちゃん・藻屑のホラ話の裏に家庭内暴力があることに気付きはじめるあたりから、心理サスペンスとして面白いし、ストーリーも加速して痛々しいラストまで一気に引っ張られる。

キャラもいいんだよね。ひきこもりの安楽椅子探偵として（ラストは椅子から立ち上がって）活躍するなぎさの兄、教師という仕事に誇りを持ち、あまりうまくはいかないけど、でも必死で生徒のことを考える先生。リアリティあるようでないような、でも魅力的なキャラづくりもこの著者のいいところだと思う。

この作品で描かれるような悲しい事件は、現実に毎日のニュースに流れてる。そしてそんな事件を描いた作品はたくさんある。そんななかでこの作品は、小説としてはかなりゴテゴテとデフォルメしてあるものの、本質的な部分は直球。だからぐっとくる。とくに最後の２ページあたりは胸に沁みます。「ロリポップでは子供は世界と戦えない」…傍観者ではありながらもこの無力感は共有できるから。

同じ版元から出てるシリーズモノも読んでみよう。あ、それからこの人のタイトルの付け方、センス良くて好きです。