少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)(桜庭一樹/東京創元社)<19>

少女には向かない職業 (ミステリ・フロンティア)
なんか最近注目されてます?この人。初挑戦。

中学二年生の一年間で、あたし、大西葵十三歳は、人をふたり殺した。
夏休みにひとり。それと、冬休みにもうひとり。
武器はひとつめのときは悪意で、もうひとつめのときはバトルアックスだった。それであたしが思ったのは、殺人者というのはつくづく、少女には向かない職業だということだ。(中略)
少女の魂は殺人に向かない。誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏はたまたま、あたしの近くにいたのはあいつだけ。
宮乃下静香だけだったから。

この書き出しで、一気に引き込まれてしまいましたよ。しかもこのプロローグ、「人を殺した」というのはけして比喩とかではないのだ。
主人公の葵は、学校ではお調子者だが、家に帰れば一日中酔っぱらっている養父とイライラした母にはさまれやたら大人しい、苦しい二面性を抱える少女だ。その夏、葵はさらにサイテーな日々を過ごしていた。夏休みだから友達にもあまり会えない、バイトしてためた金を養父に盗まれる、仲の良い幼なじみの男の子にかわいい彼女が出来る……鬱々していた葵に近づいてきたのが、宮乃下静香だった。図書委員やってる地味なクラスメイト…葵にとってはそんな印象しかなかった彼女だったが、二人で会っているときはまるで印象が違う不思議な少女。そんな静香が葵の耳元でささやく。「ぜったいみつからない人の殺し方、教えてあげようか」…と。
まず舞台がいいんだよね、山口県沖合の島。これが都会とか新興住宅地とかだったら、ちょっとありきたり感あるし。そういう土地の雰囲気も関係してるのかもしれないけど、少女たちも変な知恵付いてなくて好感持てる。夢見がちで、変に潔癖なところがあって、何かに盲目になれる……現実からほんの数センチ浮き上がってるような少女たちの描き方が、とてもリアル。
サスペンスとしてももちろん面白い。しかしオチに使われるあの作品、読んだことあるしけっこう好きなのに、そこまで気付かなかったなぁ。どっかで聞いたような話だなとは思ったものの…。だれかわたしにメモリ足してくれ。
とにもかくにも面白くて一気読みでした。前の作品も読んでみたい。