絶壁の死角 (新潮文庫)(クリントン・マッキンジー/新潮文庫)<1>

絶壁の死角 (新潮文庫)
なんか読み応えのある翻訳ミステリ読みたいなー、と本屋をぶらぶらしてたところ、北上次郎のコメント付き帯のこの文庫が新刊の平台に乗っかってたので買ってみた。この人の作品を読むのは初めて。
学生街で起きた、人種差別的かつ残酷な殺人事件に全米中が注目したいた。事件後すぐに逮捕されたヤク中の兄弟の死刑宣告へのカウントダウンが始まっていたー。現場近くで別件の捜査に当たっていたバーンズ捜査官が、一見無関係としか思えない二つの事件の共通点に気付き独自に捜査するが、州警察ぐるみの隠蔽工作に次々と邪魔され…。
読み始めてから気付いたけど、これは前作があるんだね。前作『コロラドの決戦』を読んでからこれを読んだ方がいいだろうね。でも今さら止められないところまで読んでたから、あきらめて読んでしまったけれども。
どうなんだろう。ミステリとしてはひねりがないし、キャラクター造形も安易に思える。結末がわかった上でそれ通りに進めていくならば、もっと人物描写や背景にもっと踏み込んでほしかった。スピーディーな展開で読ませるんけど、読んだあとに改めて考えるといろいろ欠点が浮かんで来るかんじ。北上次郎氏の解説から引用した「ショッキングな展開……。立ち直るには、しばらくの時間が必要である。」という帯のコメントに関しては、物語中盤の<あの事件>についてなのだろうけど、前作を読んでないせいか思い入れがなくてあまりショックに感じないのが残念。
個人的な好みとしてはやたら女にモテる主人公もあまり気に食わん。どちらかというと、地元警察のあくどさに辟易して主人公に協力する、心優しき大男なジョーンズ保安官が好みだな。