東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~(リリー・フランキー/扶桑社)<39>

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~
実はこの人の初めての小説(たしか短編集だった)を発売当時に読んだのだけどあまり好きではなくて、この作品が話題になってるのは知ってたんだけど、なかなか手が伸びなかったのだ。でも立ち読みした山田詠美のエッセイで「小説としてのつたなさはあるけど、視点は完全にプロの小説家」みたいな言葉でかなり褒めていたのを読んで、あっさり買ってしまった。
…で、これが泣いてしまったんだよねぇ。こんなにぐっと来る作品もなかなかない。ま、もともと親子系の話には弱いんだけどもさ。でもそれにしてもすごく良かった。
内容はというと…東京に生まれ、九州で育ち、高校卒業とともに上京し、そのまま東京に住みついた著者の、両親との関係を軸にした自伝だ。「オカンとボクと、時々、オトン」としか言いようがない。
共感するものもあるのかな。著者が育った地域ってわたしの地元にも近くて、なんか気質みたいなのわかるんだよねぇ。「男が金のことでゴチャゴチャ言うなんてみっともない」みたいなのとか。このオトンほどではないものの、基本的に自分勝手な男や、そこらへんにいちいち動じない達観してる女は多いし。
山田詠美の言葉もよくわかる。荒削りなんだけど、だからこそダイレクトに伝わってくるものがあるんだよね。
上手く言えないけど、本当に読んでよかった。ていうかもっとはやくに読むべきだったな。
余談だけど、本の帯が太くて、小さい文字でいろんな人からの推薦文が入ってるんだけど、それがなんかうっとおしいな…と思ってたところ、ほぼ日での対談でこの帯に対して糸井重里も…

この本に関しては
みんな、鼻息荒いんだよね、褒め方が。
普通さ、社会的な生き方をしてる人を
こんなに褒めたら
人は胡散臭がると思うんだよ。
それを全然気づかずに書いてるっていうのは
広告屋としてオブザーバー的に見ると、
「外してるよ、君」と。
そこがもったいないなあ。
どこから出したんですか?

扶桑社、プロの広告屋にダメだしされてるよ!でもまったくその通り。過剰な褒め言葉は不要なほど、内容がいいしね。
ちなみに本を読んだあとこの対談見るとさらに面白いです。
http://www.1101.com/lily_tokyo/index.html