容疑者Xの献身(東野圭吾/文芸春秋)<40>

容疑者Xの献身
最新刊。ちょっと悩んだけど、買ったらやっぱ一気読みでした。

天才数学者でありながら家庭の都合で高校教師となった石神。さえない風貌のせいか数学以外に興味がないせいか未だ独身の一人暮らし。だがその隣に越してきた靖子にほのかな想いを寄せていた。ある晩、靖子はどこまでも追いかけてきて金をせびるもと夫を、娘・美里とともに勢いで殺害してしまう。それを知った石神は、絶対に二人が捕まらないように計画を立てようと、協力を申し出る。一方その事件にかり出された刑事の友人である物理学者・湯川は、その事件に大学の同級生である石神が関わってることを知り、興味を抱くが…。

天才数学者による完全犯罪という贈り物。それをもらった女はどう応えるのか。それに挑む物理学者は謎を解くことができるのか。こんなとんでもない設定ではじまるこのストーリーを読みはじめれば途中でやめることは不可能でしょう。何よりもラストに明かされる石神の計画にかなり驚かされた。そりゃー警察なんぞには真実は見抜けないわ。
問題はそこまで石神が二人のために体を張る意味があったのかどうか。彼の計画の全貌が明らかになったとき、そこにちょっと疑問を感じてしまったのだけど、そこはさすが、ラストの石神の回想部分で、なんとなく納得させられた。脳みそだけあればどこででも生きていける偏屈な数学者というキャラクターがあってこそ、なギリギリのトリック。
この人の長編は本当に読み応えがある。しかもこの作品はミステリ的な側面から見れば、今まで読んだ中で一番いい。楽しませてもらいました。