Strawberry shortcakes (フィールコミックスGOLD)(魚喃キリコ/祥伝社)

Strawberry shortcakes (フィールコミックスGOLD)
先日読んだ角田光代の対談集『酔って言いたい夜もある』で登場した、美人で男前なこの著者がとても気になったので買ってみた。名前は見たことあるんだけど、実際に作品を読むのははじめて。<ナナナンキリコ>と読むのね。
手ひどい失恋の傷を癒せずに自分の体をいじめ抜くイラストレーター・塔子、自分の居場所を見つけられずに男に依存するOL・ちひろ、<友達>という居場所すら失うのが怖くてままならない片思いに苦しむ売れっ子デリヘル嬢・秋代、「恋したい」と願いつつも焦らず日常を楽しむフリーター・里子。この4人を主人公に、<恋>のいろんな側面を描いた連作短編集。

漫画を読んで、これほどまでに切なくて苦しくなったことがあるだろうか。いや、絶対にない。漫画は好きだからたくさん読んできたけど、「ドキドキする」とか「感動する」とか「泣ける」とか、そんな作品はいっぱいあるけど、こんなに胸が痛くなる漫画を今まで知らなかった。

壊れた恋の残骸に苦しむ塔子、自分の居場所を恋愛の中に見いだそうとするちひろ、激しい恋心を秘めて普通に笑う秋代、恋の到来を待ち続ける里子。王道のラブストーリーの終着点から少しずれたところにいるようにさらりと描かれるこの4人の状態が、実は<恋>そのものだと気付かされる。ひとり相撲してるときが一番、妄想したりはしゃいだり舞い上がったり勝手に傷ついたり苦しくなったり死にたくなったりする。受け止めてくれる相手がいないところで、そんな自分を抑えることができなくなるときが一番、「恋してる」と名付けるにふさわしい。

塔子、ちひろ、秋代の3人の恋が痛々しいので、里子の回が一番ほっとできる。…のだけれども、冷静に考えると、次の恋を待ちながら今の日常を楽しめるなんて、実は一番バーチャルな存在な気がする…のはわたしだけ?

とにもかくにも、本当にいい作品だった。恋愛小説は山ほど読んできたけど、ここまでぐっと来る作品はなかなかない。今まで知らなかったことが悔しいけど、未読の作品があると思うと嬉しくてたまらない。