時生 (講談社文庫)(東野圭吾/講談社文庫)

時生 (講談社文庫)

不治の病を患う息子に最後のときが訪れつつあるときに、宮本拓実は妻に、二十年以上前に出会った少年との思い出を語りはじめる。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追ったー。

死の淵に立つ息子と若き日の父親が出会い、ひとつの事件に巻き込まれる。SFでもありファンタジーでもありミステリでもあり家族小説でもある、読み応えたっぷりな一冊。息子の死を迎えようとする病院での<現在>と妻との結婚から息子の誕生までの<過去>が交錯する序章から、一気に舞台は拓実の若い頃に。いきなり引きずり込まれてしまう、上手い導入部。主な舞台となる1979年当時の描写もいい。話としてはちょっときれいにまとまりすぎな気がしないでもないが、そこを差し引いても十二分に面白かった。