花まんま(朱川湊人/文芸春秋)

花まんま
今さらながら直木賞受賞作。この人の作品を読むのははじめて。
大阪の下町を舞台にしたほんわかホラー短編集。個人的には、仕事もせずに毎日ぶらぶらしてるくせに妙に女にモテる<おっちゃん>の葬式の珍騒動とその後を描いた「摩訶不思議」が一番好き。いるよね、こういうおっちゃん。「死んだあとまで迷惑な奴やったな」と苦笑いしながら語る親族の顔が見えるようだ。ラストになってそのタイトルの意味がわかる表題作、そして近所に住む病弱な少年とのせつないやりとりを描いた「トカビの夜」はかなりじんときました。
ジャンルわけすればホラーに入るのかもしれないけど、「死んでも残る人の心」というものを丁寧にすくいとった人情話といったかんじ。楽しんで読めた。