福音の少年(あさのあつこ/角川書店)

福音の少年
あさのあつこ最新作。『透明な旅路と』に続いて大人向け小説は二冊目かな?
小さな地方都市であるアパートが全焼、9人の死者が出る惨事となった。その死者には高校生である藍子も含まれていた。藍子のもと彼氏である秋帆、藍子の幼なじみである陽、ジャーナリストの秋庭…3人が出会ったとき、事件は急速に真相に近づいていくー
うーん…どうなんだろう。まずね、秋帆と陽のキャラがかぶりすぎてる。普通二人の男の子が主人公なら、ある程度そのキャラの差異はつけるもんでしょう。深いとこ突けば違うんだろうけどなにせ登場人物少ないし、しかもその<違い>すら示されてないかんじなんだよねぇ。さすがというべきか、秋帆と陽から見える外の世界についての描写は、引きずり込まれるほど上手い。でも本人たちの内面の核になってるものが伝わってこないんだよね。
ストーリーも辛い。ラストが唐突すぎだもの。ミステリとしてもサスペンスとしてもこのラストは駄目だろう。
「『バッテリー』のあさのあつこ」とでかでかと帯に書いてあるけど、この作品に関しては角川の編集の怠慢さを感じる。そりゃ「バッテリー」はいい作品だし売れてるし、それを自分とこで文庫化できてそれも売れて、あさのあつこ様様だろうけど、だからこそ「バッテリー」に負けないような作品書かせるのが仕事じゃないのかよう。あさのあつこにしか書けない作品は絶対あると思う。それを見つけるまでに時間がかかるのかもしれないけど。さきに「バッテリー」みたいな作品を読んじゃってるから期待が大きくなってしまってるだけかもしれないけどさ…残念でした。