死神の精度(伊坂幸太郎/文芸春秋)

死神の精度
待ってました伊坂幸太郎の新作。装丁が素敵。紙もけっこういいの使ってますね。

俺が仕事すると
いつも降るんだ
クールでちょっとズレてる死神が出会った6つの物語

またまたいいキャラつくっちゃったね〜。死期が近い人間に近づいて調査し報告する「仕事」…それがこの作品における死神。その一人である主人公の千葉のキャラクターが抜群にいい。ちょっとボケてて、雨男で、わりと仕事には熱心で、そして<ミュージック>を心の底から愛してる。来てほしくはないけど、もしわたしのところに死神が来るのならぜひ千葉を指名したい。間違ってもリュークやレムみたいなのはお断りだ。
もちろん「死」に関わる話ばかりだから、辛い話が多い。でも自分が死ぬことを知らない登場人物たちと死神・千葉のズレた会話がおかしくて、すいすい楽しく読めてしまう。やくざ人情モノの「死神と藤田」、ひとつの恋が悲劇を生む「恋愛で死神」は切なくてとてもよかった。本格ミステリ風味の「吹雪に死神」も意外な路線で楽しい。そして何より最後の「死神と老女」がよかった。海を見渡せる高台にある美容院を一人で営む老女と千葉が過ごした数日間を描いたこの短編は後味が良くて、ラストにぴったり。
せつなくてちょっと笑えて心にじんとくるとてもいい短編集だった。