くうねるところすむところ(平安寿子/文芸春秋)

くうねるところすむところ
平安寿子の新刊。
求人情報誌の副編集長をつとめる梨央は毎日が不満だらけ。あげくに30歳の誕生日、妻子持ちの恋人にデートをドタキャンされ、一人で飲んで酔っぱらって入り込んだ工事現場で鳶職の男・徹男と出会う。彼と彼の仕事に興味を持った梨央は下心も手伝って、ある工務店に転職することとなるのだが…。
他の女に溺れる旦那に見切りをつけ離婚したはいいのだが、先代である父親の命でもと旦那のかわりに工務店の社長となってしまった響子、通称<姫>。右も左もわからない業界でしかも社長の肩書きをつけさせられて目の回る毎日から逃げ出したいと願うのだが…。
慣れない建築業界で右往左往する二人の女を主人公にしたハートウォーミングな物語。仕事に関わる話をメインに、家族の問題、人間関係の難しさ、上手くいかない恋の面倒さなど、いろんなエピソードがたっぷり入ってて、すごく楽しめた。これまで読んだ平安寿子の作品の中でもかなり上位にランクづけたい作品です。そして表紙のイラストがかわいい…。

五十の坂を越えてわかったのは人生、必死にならなければ何も得られないということです。三十と四十五の女が思いがけない事情から人の家を建てる仕事につき、悪戦苦闘しながら必死で探るのは、明日を生きるための手がかりです。生まれ育った家、初めて自分で家賃を払った家、そして、人生最後の時を過ごす家。あなたの人生とわかちがたく結びついている家を思い出しながら彼女たちの冒険にお付き合いいただければ、作者としてこれ以上の幸せはありません。必死であればあるほど、思い出という名の果実は豊かに実るのですから。

これは帯の作者の言葉。というか平安寿子って50越えてたのか。もう少し若いかと思ってた。