ぼくが愛したゴウスト(打海文三/中央公論新社)

ぼくが愛したゴウスト
この人の本を読むのは久しぶり。
11歳の翔太は一人でアイドルのコンサートに行った帰り、駅のホームで飛び降り自殺に出くわした。近くにいた大人の男の人に「見ない方がいい」と言われたとおり現場を見ないまま家に帰り着くのだが、家族から変なにおいがすることに違和感を覚える。そして翌日、変なにおいは家族だけでなく自分以外の全ての人間から発されていることに気づいたが、あまり深く考えないようにしながらいつも通りに振る舞った。しかしある日、あの日ホームで出会った男性・ヤマ健と再会し、彼もまた同じ症状に悩まされていることを知る。さらにヤマ健は驚くべきことを翔太に告げた。あの日から自分たち二人だけがパラレルワールドに迷い込んでしまったのだと…。
藤野千夜の「ルート225」を思い出す設定。だけど中身はなかなかハードだ。そして一見まったく同じに見える二つの世界の相違点がかなり独特。理不尽な運命を苦しみながらも受け入れようとする翔太の気持ちが、切なくもいとしい。とても面白かったです。