ベジタブルハイツ物語(藤野千夜/光文社)

ベジタブルハイツ物語
そして最近のお気に入り・藤野千夜の新刊。好きな作家の新刊が二冊も出るとうれしいな。

その二階建てのアパートでは、各部屋に野菜の名前の愛称がつけられていて、A号室がアボガド、B号室がブロッコリー、C号室がキャロット、D号室がダイコン(無理矢理)、といった具合。

そんなアパートの住人と、隣に住む大家一家(リストラ寸前の父親、心配性の母親、割ともてる予備校生の長男、クールな高校生の長女)の、ちょっとおかしくてハッピーな日常を描いた連作短編集だ。ほのぼのとした読後感は、これまで読んだ藤野作品とはちょっと異なるところだけど、読んでいてすごく楽しかった。笑いどころもたっぷりあるし。

たまたま今夜見られるという、そのどこか親しげで、楽しげにも見える月と火星の位置どりは、夫の弘文と自分の関係のようにも、二人の生活と将来への希望のようにも真理には思えた。真理は中学時代、ポエム部の所属だった。

好きだわー、このセンス。