Book(29)

ドミノ (角川文庫)
ドミノ (角川文庫)恩田陸/角川文庫)
時間ぎりぎりで契約書を届ける保険会社社員、有名なミュージカルのオーディションを受ける少女、ミステリマニア度を競う学生、俳句のオフ会のため上京した老人と待ち合わせた警察OB、しつこい恋人と別れるため偽の恋人を連れてきた青年実業家、日本を舞台にした映画のため来日した映画監督とスタッフ、お使いでお菓子を買いに来たOL、計画実行寸前のテロリスト―。東京駅という複雑広大な場所を舞台に、本来無関係なはずの27人と1匹が巻き込まれるパニックコメディー。
う〜ん、絶妙!最初に紹介される登場人物の多さに、そうでなくても登場人物のやたら多い外国ミステリを苦手としてる身では無理かも…と思ったけど、何だこのスピード感!
まず東京駅という舞台を選んだことが最高にいい。最大のターミナル駅であることはもちろん、地下を含めたあの複雑さは並大抵のもんじゃない。そしてビジネスマンや旅行者が待ち合わせ通り過ぎ、多数のショップとレストランがひしめき合うあの雑然さ。テロリストの出現によってさらなる混乱を招く事態に登場人物の一人が毒づく。「なんでよりによって今日の東京駅なのよ」!いやいや…たとえ今日じゃなくとも違う誰かが同じセリフで毒づいてるはずだよ。
登場人物の多さは、そんな東京駅という舞台を背景にすればむしろ少なすぎるくらいかも…と思ったがこの本の長さを考えればまさに絶妙だ。そしてタイトル通りドミノ倒しのようにいや応なく絡み合っていく登場人物たち。軽快なタッチとスピード感でぐいぐい読めるところも評価したい。ベスト・オブ・東京駅小説!