文庫本特集

気付けば日付が変わって、今日は金曜日。
早いよな。こんなにぼんやりしてていいんだろうか。いいわけないよな。せっかくの時間を有意義に使うことができたら、わたしの人生は変わってるだろう。今からでも遅くないと思うけど。

最近は文庫本の存在をすっかり忘れてたのでまとめて…。

娼年石田衣良集英社文庫
この人は<常軌を逸した世界>と<現実>を上手に織り交ぜる作家だと思う。まあ常軌を逸したものが織り交ざってるのが本当の現実だとはわかってるけど、人は自分の周りだけを現実だと思うからね。だけどこの人の作品は男女のことになるとどうも上滑り感が強くなる。まあ男はロマンチストだからね。


『翼はいつまでも』(川上健一・集英社文庫
理想的とも言える青春物語!?ビートルズに衝撃を受けた中学生って世代は、現代日本からしたら異国のものに近いかも。ま、それでもちょっと奇跡的なところが多すぎるけどね…。ま、それをマイナスしても素敵な小説であることには間違いないけども。


『オーデュボンの祈り』伊坂幸太郎新潮文庫
この人の作品、ほんとおもしろいね。これは設定からしてファンタジー入ってるので苦手かなーと思ってたけど、引き込まれてしまいましたわ。奇抜なキャラクターと設定のつくり方と、ミステリとしての正当な攻め方があいまって、感心してしまう。この人は消えないね、うまいもの。


『きもの365日』群ようこ集英社文庫
これ、着物に興味ない人が読んだら退屈だろなー。よかった、初心者ながら興味があって。群さん、着物似合うねえ。顔が日本人らしいからかなあ。あまりに着物となじんでて、浅草あたりだったらすれ違ってもわかんなそう。この本の中で群さんが「最近はアンティーク着物が若い人の中で流行ってるようでそれは嬉しいけど、その着物たちはこれからどうなるのだろうか」みたいなことを書いてて、わたしにとっては「ぐぐっ」と言い逃れできないところを突かれた気がした。そうなんだよね、着物っていうのは終わりがなくて、もし着物として使えなくなってしまっても布団掛けとか座布団とか巾着とか色んな使い道があって、昔の人はぼろぼろになっても捨てなかったらしいしなあ。今の洋服文化だと、せめてTシャツとかだったらパジャマになるとかの家庭内リサイクルがあるだけで、あとは汚れてなくても流行おくれとかなんとなく着なくなったものも捨てられてるからなあ。着物っていうのはよく考えると、その反物自体、作られるのに手間がかかってるものだから、大事に使われてたんだろうなあ。


 こないだ、Kさんと一緒に浅草に帯を買いに行った。浴衣に合わせる半幅帯が欲しくて、浅草出身のKさんに付き合ってもらったのだ。Kさんがいつも着物を作ってもらうという仲見世の近くの呉服屋さんに行った。
 店頭のワゴンに色んな帯が入ってて、安いだけあって全部ポリエステルだった。Kさん曰く「ポリエステルは締めにくい」そうだが、その中でも織りっぽいやつなら大丈夫だろうとのことでそこからいくつか出して見ていた。その中からわたしは水色っぽいものと薄い紫のものを2本選び出して悩んだ。どっちもいいけど、どちらかといえばわたしは水色のものに惹かれていた。涼しげだし紺色の浴衣に合うと思ったし、わたしは水っぽい色が好きだからだ。しかしそこで寡黙な呉服屋の親父が口を開いた。「こっち(薄紫のほう)がいい。そっち(水色の)はあと何年かしてからだ」
 ふと頭に浮かんだのは沢村貞子の『私の浅草』。こういう助言って新鮮だわー。年相応って大事なことなのかも。こういう親父はあんまりいないんだろうけどな。ま、とりあえず助言に従い、薄紫を購入。