王国

王国

王国

「究極の悪」とか「絶対悪」という言葉が本作や『掏摸』の帯にも目立つように入れられているけど、どっちもファンタジックなんだよね。リアリティーの伴わない悪意なんて怖くない。常に何かに追われ続けるスリリングさは楽しめるものの、『掏摸』に比べると何のカタルシスもない主人公に感情移入しにくく、木崎も出番が多いゆえか恐怖感も薄れた気がするんだよな…。
読了日:06月28日 著者:中村 文則

掏摸(スリ)

掏摸(スリ)

掏摸(スリ)

今更ながら初中村文則なわけですがなかなか面白かった。こないだ観た映画『アジョシ』と基本話は同じなんだよね。孤独な主人公が自分に懐いた子どもを助けるために悪事に手を染めるっていうね、古典的な。ひねりのない初期の伊坂作品、というのが自分でも膝を打つ感想なのだけど失礼かな。だけど中学生くらいから大人まで楽しめる作品だと思う。他の作品も読んでみよう。
読了日:06月26日 著者:中村 文則

K・Nの悲劇 (文春文庫)

K・Nの悲劇 (文春文庫)

K・Nの悲劇 (文春文庫)

「妊娠」をキーワードにいくつかのエピを幸不幸織り交ぜて組み立てる構造、またラストに向けて一気に加速するあたり、やっぱり上手いなぁと思う。ぐいぐい読まされた。しかし、子どもを堕ろすことへのあっさりした決断が主人公と「あの男」の言葉に代表され、まるで「男の思考」としてざっくりまとめられてるかんじが全体的に嫌な読み心地を生み出してる。そしてラストに至っては全然納得できないだよね。K・Nの悲劇の原因は「あの男」ではなく、父親のわからない子どもを認めない実の家族だったのではないの?そういう整合性が取れてない気がして消化不良でした。
読了日:06月21日 著者:高野 和明

凍原 北海道警釧路方面本部刑事第一課・松崎比呂 (小学館文庫)

桜木紫乃が警察小説!?という驚きで即買い。サブタイといい女刑事イメジのカバーといい完全に警察小説の体だけど……やっぱり警察小説ではなく桜木紫乃の小説!殺された男が探していたのは自らの出自を証明する「女」。それは男に流され奔放に生きる女、秘密を抱えて夫を公私ともに支える良妻、婚約者を待ち続ける健気な女、息子のために罪悪感を背負う孤独な女でもあった。女たちはまるで別人なのにただ一人の女にも見えてしまう不思議。そしてその集合体である女がある元少年を大事に育て、その一方で青い目を持つ元少年を死に至らしめる。そんな女たちの人生に読み応えがないわけがない。桜木紫乃は人生を描く作家だと再認識。未読の人はぜひ本作から!(文庫だしね)
読了日:06月12日 著者:桜木 紫乃

7SEEDS 22 (フラワーコミックスアルファ)

7SEEDS 22 (フラワーコミックスアルファ)

7SEEDS 22 (フラワーコミックスアルファ)

【22巻まとめ】花が藤子ちさと再会キャッキャするも謎のキノコ大量繁殖、新巻さんあゆの旅はいいかんじになったところで花の痕跡を発見!【続く】今巻はわりとほっとできるエピソード多め、ていうか登場人物も少なかった。さてこうして少ない登場人物たちが出会ったり別れたりを繰り返してるだけでも本当に面白いんだけど、全体のストーリーのオチをどうつけるのかそろそろ気になってきた。でもまだまだ先なんだろうなぁ。
読了日:06月09日 著者:田村 由美

老人と犬 (扶桑社ミステリー)

老人と犬 (扶桑社ミステリー)

老人と犬 (扶桑社ミステリー)

隣の家の少女』の記憶が生々しいうちに読んだせいか、法とか常識とか関係ねーよもうこちとら老後だし!てエイブリーがぶっ壊れるのを待って待ちぼうけをくらったクチです…。いやでもやっぱり怖かった。途中でふいに明かされるエイブリーの家族の過去、息子が乗っていようと後ろから車ごと突っ込んで来る興奮した父親。突発的な狂気に何度もため息をつかされるのだ。あとまあ関係ないけど、この装丁、社内でやったんだろうけど気持ち悪いです。。。
読了日:06月07日 著者:ジャック ケッチャム

ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)

ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)

ダウン・バイ・ロー (講談社文庫)

八神瑛子シリーズ『アウトバーン』『アウトクラッシュ』でわたしの知る日本の警察小説をあっさり置き去りにするスケール感を見せつけた深町秋生の新作は、幼なじみの死により崖っぷちに追い込まれた女子高生を主役にした巻き込まれ型ハードボイルドミステリだ。構成やキャラ描写など特筆したい点はいくらでもあるのだけど、やはり「田舎」と「貧困」のダブルキーワードから生まれる悪循環のリアリティに圧倒された。悪人にとって田舎は住みやすい。それはまるでジム・トンプスンの世界。装丁もそういう方向を意識してる風でかっこいい。文句なしの一作でした。オススメ。
読了日:06月06日 著者:深町 秋生