忘れられたワルツ(絲山秋子)

忘れられたワルツ

忘れられたワルツ

短編集。震災によって変わった意識そのものを忘れはじめてるわたしたちの物語。

ラストでさらっと読者と距離をとる、絲山さんの作品がほんとにほんとに大好きだ。

『恋愛雑用論』の日下部さんと小利口くんの会話が、『葬式とオーロラ』の付かず離れずの距離が、『忘れられたワルツ』の記憶の中の音楽が、愛しい。

イチオシは『NR』。中年男二人が電車に乗ってるうちに見知らぬ土地に連れられていく。なんてつらいノーリターン。ここでさらっと手を離される登場人物たちのよるべなさを思うと著者のSっぷりにニヤける。

それぞれに「死」との距離について考えさせられた。読み口は軽くてもさすがの絲山印です。