そして父になる


期待して覚悟して劇場にまで観に行った。うん、覚悟してたとおりまあ泣いた泣いた。そして期待以上の作品だった。ひさしぶりにパンフ買ったよ。


赤ちゃん取り違え事件については、それだけでいろいろ語りたいことがある。だけどそれはおいといて。


失礼ながら福山雅治が役者としてこんなにハマるとは思わなかった。
福山演じる野々宮良多は自信たっぷりのエリートサラリーマン。「ひとつ屋根の下」で彼が演じた(初期の)にあんちゃんに近い、鼻持ちならないタイプ。彼はこういうイヤミな役をやるしかないんだと思う。このルックスで中身もいい人なんて気持ち悪い。あとはお馴染みガリレオ的な変人役。


そして彼の妻みどりを演じたオノマチ。カーネーションの糸子に代表される気の強い役のイメージが強いけど、本作においては夫の前では自分を出来るだけ抑える大人しい妻を好演。いかにも俺様な良多が選びそうな奥さんだなぁとカップリングのリアリティにもうんうんと頷いた。


対するもう一つの夫婦の斎木雄大とゆかりを演じるのはリリー・フランキーと真木ようこ。雄大は父親としてちょっと理想的すぎるかなと思わないでもない。こんな風に子どもと真剣に遊べるお父さんて少ないよね。それでもリリーさんの出るシーンは劇場でもよく笑いが起きてて(毎回遅刻してくるのとその言い訳とか金にがめつい発言とか)、この映画にとって大事なアクセントだった。


真木ようこも肝っ玉系母ちゃんが意外にもハマってる。意外でもないか。「これから相手の親に似てくる我が子をこれまで通り愛せるだろうか…」と窓の外眺めながら物憂げに問う良多に「愛せますよ。血だの似てるだのにこだわるのは男だけ」とぴしゃりと返すシーン、きっと良多はゆかりみたいな女は嫌いだろうな〜と思いながら見てた(笑) 


そこに物語の要となるふたりの子ども、慶多と琉晴が、ドキュメンタリー的な是枝演出によってまるで素のままのようにそこに存在し、大人たちを巻き込んで奇跡のような繊細なシーンをいくつも生み出していく。決してたたみかけるようではなく、奇跡のシーンは静かにつみ重なっていき、後半は泣けて泣けてしょうがなかった。


そしてラスト、良多が写真を見るシーン。インタビューによれば監督は削る意向だったものの真木さんらキャストの希望で復活したという。決定打のようなシーンはつくりたくなかったのかな。だけどこのシーンは本当に本当によかった。世界が反転した。「愛していた」だけでなく自分のまた「愛されていた」のだと。


ぜひまた見たい。DVD出たら買います。


余談だけど、同じ天然系であるリリー・フランキー樹木希林の絡みは最高!おっかしくてしょうがなかった。


原作本ではないけど参考文献。昔読んだのだけど今回また映画の前に再読しました。
取り違えが起きた二組の家族のその後を十数年にもわたって取材を続けた素晴らしいノンフィクション。取り違え事件の残酷さと、子どもにとって必要な家庭環境について考えさせられます。


そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

そして父になる【映画ノベライズ】 (宝島社文庫)

こちらは本屋でチラ読みしただけ。映画では描かれなかったけどこうなるといいなぁと思っていたラストが、このノベライズでは描かれていて嬉しかった。