ハナシがはずむ! (笑酔亭梅寿謎解噺 3)(田中啓文)

ハナシがはずむ! (笑酔亭梅寿謎解噺 3)

ハナシがはずむ! (笑酔亭梅寿謎解噺 3)

トサカ頭の駆け出し落語家竜二のシリーズも、もう三冊目に来ましたか。これは読んでて楽しいからなぁ、出来るだけ続いてほしいです。シリーズものだからこその適度なベタさ加減と圧倒的なキャラクターの魅力の合わせ技で、ついつい引き込まれちゃう。それに短編ひとつひとつの、緩急の絶妙さやラストへの盛り上がり具合にはただただ感心するしかない。何も考えずに楽しめる一方、その楽しさについて改めて考えるとシリーズもの短編としてのレベルの高さを知って、さらに嬉しくなる。
今作もまた、まわりに振り回されてへとへとな竜二の、その実本能赴くままにしか動かない竜二に読者が振り回される。なんかね、出来の悪い弟を見るような目で見てしまう。落語家ではなく役者に本気で揺れ、売られた喧嘩はきっちり買い、相も変わらず女に甘く騙されそうで、芸にはどん欲で、恩義を感じた相手のためとなればひたすらかけずり回って面倒事まで引き受けてしまう。馬鹿だねぇと思いながらもハラハラして見守ってしまうんだよ。頑張って出世してくれと思う一方で、遅々としながらこのシリーズ長続きしてくれと、どちらにせよファンの心わしづかみなシリーズです。