自虐の詩


けっこう楽しみにしてましたよ。公開したばかりの混んであるだろう週末にわざわざ出向くほどに。
で、その期待の大きさに対して、過不足のないものを頂きました。くすくす笑えて、じわじわ泣けた。単純に映画館の中でボロボロ泣いて映画館を出る頃にはむしろ清々しさを感じる類いのものではなくて、映画館を出てぶらぶらして、エレベーターに乗ってるときとか、ごはん食べてるときとか、ふとした瞬間に思い出してまたじわっと来てしまいそうになってそれを我慢する、というような。
ストーリーの主軸は、幸江という薄幸な女の半生。幼い頃に母親に捨てられ、ダメオヤジに育てられ、そのダメオヤジはダメすぎて銀行強盗までしちゃって塀の中。幸江は中学卒業と同時に希望を求めて東京に出るも、見事な転落人生で、気付けばシャブ中のたちんぼにまで。だけどそんな自分に何故か惚れたヤクザのイサオと生活をともにすることに。とはいえヤクザから足を洗ったイサオは働くでもなく、幸江の給料を巻き上げて遊びまくり、気に食わないことがあればちゃぶ台をひっくり返す毎日……幸江の幸せは?
まーとにかく、中谷美紀がいいですね。キャラがかぶってるせいか『松子』を意識したと本人も監督も語ってたけど、中谷美紀に関しては『松子』より『自虐』のほうがいいと思ってしまいました。
阿部ちゃんは普通。ていうかこれ以上演じようもなかったんだろうけど、原作みたいに幸江の姿が見えないだけであたふたしちゃうようなかわいいシーンがもっとあれば良かったのにな。
いちばん好きだったのはあさひ屋のマスターを演じた遠藤憲一。やっぱこの人いいよ。ありきたりな「いい人」役が似合うのだけど、そういう沈みがちな役に存在感を持たせてくれる。
その他では、幸江の父親役の西田敏行がやはり上手くて笑わせてくれるし、中学生時代の幸江と熊本さんを演じた二人も良かった。
どこか冗長な前半から一変、何度もクライマックスのある後半だが、やっぱり最高潮は熊本さんとの再会だった。ビジュアル的にはパーフェクトなアジャのカットは少ないにも関わらずその門外漢さを露呈してしまっていたが、それをカバーしてなお余ある中谷美紀の演技に、やっぱ泣かされた。
もう一度見たい。買うかなDVD.


→メモ:巨人師匠のすべらない話、こういうの、好きよ。