野性時代 vol.48 (KADOKAWA文芸MOOK 49)

野性時代 vol.48 (KADOKAWA文芸MOOK 49)

野性時代 vol.48 (KADOKAWA文芸MOOK 49)

書影が出ないのは、岡田くんが表紙だから? 野性時代、買うのは相当久しぶりだけど、今号はなかなか読み応えありました。


特集が「短編ミステリの愉楽」。著者は有栖川有栖貴志祐介道尾秀介薬丸岳柳広司石持浅海
群を抜いてセンスがいいと思うのはやはり、道尾秀介「悪意の顔」。短編だと際立ちますね。無邪気だった男の子とすべてを失った女の悪意が交錯するとき……。恐怖、哀しみ、悪意、切なさが入り交じった秀越な一作。貴志祐介さんは初めて読みましたが(防犯コンサルタント榎本シリーズ)、コンパクトにまとまっていて好み。シリーズものらしいので、既刊があれば買って読んでみよう。柳広司さんの短編を読むのは初めてかな。スパイもの。短編らしいひねりが効いてたしキャラも立っていて面白かった。この人の作品も長編を2〜3作しか読んでないので、未読のものを読みたい。


その他、読み切りで注目は伊坂幸太郎古川日出男朝倉かすみ
「美しい一致」を目指すプロの復讐屋の仕事を描いた伊坂さんの短編は、思いっきりダーク。それでもシニカルな台詞回しと余裕のある雰囲気で、伊坂作品の大筋からは離れていないと思うんだけど。まあやっぱり上手いなぁと思う。
古川さんのは、学校に立てこもって永遠の夏休みを手に入れた少年少女の物語。相変わらず理解できるようなできないような、たぶんできてないと思うのだけど。この人の作品から感じるのはやはり、スピード感。速くなりすぎて、一時期その反動か丁寧なまでに歩調を落として、今また助走している(それでも十分速い)……気がする。
朝倉さんのは、就職せずにぶらぶらしている女の子とその友だちの話なのだけど、これがまたいいのよ。で、これまたどこがいいのか説明しづらいのだけど。どこが?と問われれば全文引用するしかない。一語一語読み飛ばせない作品は希有。


あとは翻訳モノの短編をこれから読むつもり。面白かったらまた、別でレビュー書きます。


というわけで、今号の野性時代は個人的に好きな作家の読み切り短編が多くて、読み応えたっぷり。最近長編を読み通す読書体力がないというのもあるけど、改めて短編の魅力にハマってしまいそうです。