生きものの記録 [DVD]

生きものの記録 [DVD]

生きものの記録 [DVD]

クロサワ映画を見るのは『羅生門』以来、二本目だったりします。
三船敏郎演じる主人公の社長が、原水爆に異常な恐怖を感じて家族全員でブラジルに移住しようと持ちかけるも、家族は「なにバカなこと言ってるんだ」と相手にもしない。しかし本気で行動しそうだったため、問題を家庭裁判所に持ち込まれてしまう。まあ当然、家族側の言い分が認められてブラジル移転計画は無期延期に。身動きの取れない主人公はあまりの恐怖から、徐々に精神を崩壊させていく………という、ちょっと恐ろしい話なんですね。
もっと終戦の記憶や水爆事故によって「核兵器」を身近に感じられたであろう公開当時に見てたら、もっと深く胸に突き刺さって来たような気がする。なんか現代の日本だと「核兵器」って例えば「大地震」くらいに距離があるから。たぶん当時だったらもっと社長サイドから見てしまう気がするのだ。
「見えない」ものは「無い」ものとする、そういう利便性だけは発達している気がする。
それにしてもこの主人公を演じた三船敏郎、撮影当時35歳だったと知ってビックリ。メイクもすごいんだろうけど、老人特有の動きなんかが見事で、やっぱりすごい役者さんだったのだなぁと。あとラスト、お妾さんと医者がすれ違うシーン、格好よいです。