華氏 911 コレクターズ・エディション [DVD]

今ごろかよ!という突っ込みは自己完結しておりますのであしからず。上映前から見たい見たいと騒いでたにも関わらず、結局のところ初見が地上波放送という、熱して冷めたら二度と沸騰しない自分の性格が反映された結果であります。とりあえずわたしが気付くタイミングで放送してくれたテレビ東京さんありがとう。


その実アメリカの銃社会へがっつりと向き合いながらも、適度に笑いを入れて皮肉たっぷりにまとめられた『ボウリング・フォー・コロンバイン』はとても好きな作品。そんなムーア監督の最新話題作、しかも大統領選を前にアンチブッシュを前面に押し出した作品としてフューチャーされ、だけど当時はこの映画に対してのレビューは賛否両論…みたいなかんじだったような。


で、今さら過ぎるけど今さら見たわたしの感想としては……面白かったです。いいドキュメンタリーだと思う。ドキュメンタリー映画って、制作者の意図が前提にある映像と編集であって、それを丸呑みにしてはいけないという警戒をもって見てしまうもの。だけど作品をとおして丸裸で制作者の思いが伝わってしまう場合がある。たとえば本作。マイケル・ムーアの「焦り」と「必死さ」がダイレクトに伝わってくるのだ。それこそが本作の価値である気がする。


日本のドキュメンタリー作家である森達也の『A』は、敵対する日本社会とオウム教団をそれぞれを同じ距離から撮って、思考停止の気味悪さを映し出した。だからあの作品は凄かった。一方でこの『華氏911』はひたすらアンチブッシュ、アンチイラク戦争に徹していて、とてもスマートとはいえない。だからこそ、この作品から危機感を感じる。皮肉るくらいでは間に合わない、とどかない。ホワイトハウスににらまれる映像作家の声を伝えるために、そして大統領選には。


中身については911からイラク攻撃についてまでのことだから、今さらなにを言ってもしようがないけど、ただ国がやることはいつも一緒だなぁと。局面で国民の不安を煽って煽って、そのすきに法案とか通しちゃうのね。わたしはアメリカ人じゃないからさらにどうしようもないけど、ただこの映画で一番説得力があるというか、重いシーンは、イラク戦争で息子を亡くした母親の叫びなんだよね。ある意味で安易なシーン。だからこそこれが一番、大事なシーンなんだと思った。


なんかとりとめもない感想になってしまいましたが、今さらながら見る面白さもあると思うので、未見の人にはオススメです。