ジュースキント=トカジ?

巷では「パフュームーある人殺しの物語」という映画が公開されています。その原作はパトリック・ジュースキントによる『香水』、80年代ドイツ文学界で最大のベストセラーであり、世界で1500万部を売り上げた、めちゃめちゃ有名な作品なんであります。

香水―ある人殺しの物語

香水―ある人殺しの物語

わたしはこの作品、十年くらい前に読んだんですよね、たぶん。で、すごく面白かったって記憶はあるんだけど、どういう話だったかまったく思い出せない、いつものザル頭。というわけで映画化による波及効果を狙った、新装文庫版を改めて読んでみました。


この物語の主軸となるのは無臭の男・グルヌイユの一生。自身は異常なまでに無臭ながら臭いに敏感なグルヌイユは、理想の臭いを手に入れるためなら、いかなる手段もためらわらず……結果、何十人もの処女を殺害し処刑台に向かうことになるが……!?


異常な男の人生を、勢いで読ませる物語。とどまるところがひとつもない。ひたすら流されるだけ。ぐいぐい読まされて……あの狂乱のラストにいっちゃうんですよ。


しかし笑っちゃいましたねー。笑うでしょ?あのラストは。この小説を初めて読んだときはそのインパクトに酔ってしまったけれども、今読むとコメディーにしか思えないって……どういうことだ。でもこのエログロな狂った楽しいラストは、まさに今でいうトカジテイスト。そんな雰囲気で笑って楽しめばいい作品じゃないかと。ていうか、そういう見方以外では評価できる部分が少ないというのも事実。ひたすらエンタメ作品だよね。この作品がベストセラーとなって以降、引退したこの著者は賢明だと思うぞ。