砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet(桜庭一樹)

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない―A Lollypop or A Bullet

赤朽葉家の伝説』が各方面から大絶賛ということで富士見書房、桜庭がうちのラノベノーベルで出した過去の作品も単行本で出せば売れんじゃねーの?みたいなかんじで、『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』を単行本で再リリースってわけですね。そこらへんすげーわかりやすくて勘弁してほしいけど、まー新規のお客さんは新刊だと思って買ってくれるかもしれないし、本屋でラノベコーナーには近づかないお客さんもいるだろうしね。


……って富士見ミステリー文庫版も持ってるわたしも何故か買ってしまいました。
だって装丁が素敵だし。久々に読み返したかったりして(イヤうちにある文庫版を読み返せってかんじだけど)。


でもこの単行本版で読み返して、買って良かったなと思いましたよ。むしろもともと単行本で出していいレベルの作品だったと思う。
最初に読んだ時のレビューはコチラ→http://d.hatena.ne.jp/juice78/20050927


おなじみザル頭のせいで再読にもかかわらず新鮮に読めたっていうアレですが、また一気読みしてしまいました。これが現時点での桜庭一樹の最新刊だったとしても褒めレビューになると思う。


前回のレビューで触れてないけど、今回再読して一番印象に残ったのは、放課後の教室で藻屑が花名島を殴るシーン。

青白い、細い、膝小僧。
腿。
白い下着。
ぺたんこのお腹に、小さな臍。
それらに散っているのは、新旧さまざまな殴打の痕だった。毒素が出てきているという、人魚の皮膚病。
「ほんとだ。おまえ、痣だらけなんだなぁ。海野……おまえ、汚ねぇなぁ」
「花名島正太も、汚くなればいい!」
藻屑はモップを振り上げると、花名島正太の背中を何度も何度も殴りつけた。びしり、びしり、と音が響く。花名島正太は痛そうに身を縮めて、短い声を上げた。だけど抵抗する気はないみたいで、「いてぇ!」「うっ……!」と声を上げるばかりだった。
振り上げられるモップ。
花名島の日焼けしたつややかな背中に浮かび上がり始める、鮮やかな痣。

藻屑と花名島、そして傍観者となてしまった主人公……三人だけの放課後の教室。「おまえ、汚ねぇなぁ」ってセリフはなんかエロいし、屈折しすぎた愛情表現も切ないし、それをそばで見ている主人公の心中お察しする。やたらインパクトのあるシーンだった。


というわけで再読でもがっつり楽しめる本作、未読の方はぜひどうぞ。わたしはこの人の作品かなり好きなんでこの単行本版まで買っちゃって全然後悔してないけど、ちょっと読んでみたいくらいな気持ちなら文庫版でいいと思いますよ。でもね、この単行本版を買っても損した気にならないであろうことは保証しておきます。あぁ……なんか乗せられた感でくやしい気がしてたのに、いつの間にか富士見書房の宣伝まで!!