最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)(コニー・ウィリス)

最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)

最後のウィネベーゴ (奇想コレクション)

最近、外へ出なくなったせいで全然小説が読めない。とくに集中力を必要とする翻訳モノがダメだ。一日中うちの中で好きな本読めたら幸せだろうなと思ってたけど、きちんと仕事場に通うほうが本を読めるらしい。う〜む。自宅仕事の思わぬ弊害。というわけで、大好きなコニー・ウィリスなのに、読むのにこんなにも時間がかかってしまった。あまりに細切れに読んだせいで、ほとんど覚えてないくらいだ。ま、それでも読み通せたのが逆にすごいかも(わたしにとっては)。


というわけであまり覚えてないし、そのうちきちんと読み返すつもりだけど、とりあえずあとがきなんかを頼りに記録はしておこう。


●「女王様でも」
女性が「生理」から解放された未来、娘がサイクリスト(生理になることを選択する)になると宣言して親戚大騒ぎの昼食会。
そんな設定は確かに面白いのだけど、そんなことより訳者によるあとがきを読んで愕然。

月経問題に疎い男性読者のために訳注めいた解説を少々つけ加えると、作中に登場するシャント(shunt)に類するものはすでにある程度まで現実になっている。腕にカプセルを埋め込み、血液中にホルモンを分泌させて排卵を抑制する方式で、妊娠からも月経からも自由になれるが、問題は副作用があること(副作用のないものには、月経血を真空掃除機みたいなやつで吸いとる方式があり、一部の勇気あるフェミニストが実戦してるらしい。

こえーよ!!
「勇気あるフェミニスト」じゃなくて「勇気ある人体改造被験者」じゃないの!? そりゃさーめんどくさいし痛いし、ないにこしたことはないけど、でもあるんだからしょうがないじゃん。変な実験するほうがやだよ。わたしは薬とかも嫌いなので考えられない。体に余計なモノ入れることのほうが、よっぽど苦痛な気がするんだけどなぁ?


●「タイムアウト
タイムトラベル実験を行なう研究所が舞台。でも訳者曰く

小説の九十五パーセントは主婦のよろめきドラマと区別がつかない

デスパレートな妻たち』を思い出すかんじ……かな。


●「スパイス・ポグロム
これが一番好きだったなぁ。ちょっと可愛い恋愛モノです。けど外野がうるさい。とくにあの生意気なガキたちとか!
あらため、

異星人との言語コミュニケーションと文化摩擦がテーマになる

のだけど、でもやっぱ核は素敵な恋物語なんですよ、たぶん。
でもこの作品に出てくる機械で、言葉を思い浮かべるだけで同じ機械を持ってる相手に伝わってしまうやつは、絶対に開発されてほしくないなぁ。「サトラレ」みたいだ。それとも相手に伝えたい言葉だけを拾ってくれるのかな? だとしても頭の中が混乱しそうで絶対いやだ。


●「最後のウィネベーゴ」
犬が絶滅の危機に瀕している世界。犬どころかジャッカルをひき殺しても禁固刑とかになるのだ。
これって、ときに過剰に感情的になる現代社会を皮肉ったような世界。今さらだけど、崖に落っこちた犬の救助をしつこいくらいにやってたワイドショーにはうんざりしたもの。捕獲されて保健所で大量に殺される野良犬はスルーで、ニュースに取り上げられた一匹の野犬に里親希望者が続出ってどういうことだよ。応募して抽選から漏れた人たちには、保健所から一頭ずつ犬を送っとけ!
ま、犬関連ということで唐突に思い出し怒りしてしまったけど、ちょっとズレたな。
家族同様に愛着を抱いているものに、代わりはない。なんかもう、そんな切なさに彩られた一作。「普通に犬を飼うこと」「キャンピングカーで生活すること」……そんなことが当たり前だった時代への、そしてそれぞれの忘れがたい愛情が、それを許さない時代背景をバックに、奇妙に交錯する。

犬を飼っている人、愛するペットを失った経験がある人は、うかつに電車の中などで読まないほうがいいかもしれない。

ちなみに「ウィネベーゴ」とは、大型キャンピングカー(アメリカの映画やドラマでよく出てくる「家」そのものみたいなやつ)の一種らしいです。車種は違うけど「パジェロ」みたいなことかな?