あなたがパラダイス(平安寿子)

あなたがパラダイス

あなたがパラダイス

平安寿子の最新刊は、更年期障害と、そしてジュリー!?

若い時より純情に、無邪気に、そして情熱的に

人生を生き抜いたごほうびの場所では、まだまだいける恋心が健在でした。
3人の中高年女性、夫と家族と恋人による、ユーモアたっぷりのアンチエイジング小説。


★「おっとどっこい」
ついに五十の大台に乗った図書館司書の敦子は、一見真面目ながら妻子ある男との楽な恋愛を繰り返してきた。しかし更年期に入りセックスも楽しめなくなり、家に帰ればそりの合わない母親との軋轢にストレスを溜める。彼女の心を和らげるのは、ジュリーだけ。彼女は若い頃から熱狂的なジュリーファンなのだ。そのジュリーのアルバムをめぐって、同じくジュリーファンである妻を亡くした男性と知り合うが……。


★「ついに、その日が」
53歳のまどかは疲労困憊。自分の両親と夫の両親が相次いで看護が必要な状態となり、子供たちは20歳を超えても勝手気まま、夫は勝手に定年後に何をするべきかで悩み、まどか自身はホットフラッシュやめまいなどの更年期障害に悩まされ……。もうこれだけでもおなかいっぱいだというのに、親族間でも問題が立ち上がる。夫の兄嫁が看護疲れで家出し、パク・ヨンハの追っかけになったというのだ。まどかもまた、忘れかけていたジュリーへの熱い思いがじんわりと胸に染み渡る。


★「こんなはずでは」
43歳の千里は更年期障害と診断されて大ショック。ライターの仕事も兼ねてと無理矢理すすめられ、更年期障害のための集まり「ヘイヘイ・メノポーズの会」に参加することになる。離婚の傷が癒えない千里は、会で「哀れな自分に夢中になるのも更年期障害のせい」と一刀両断されてさらに傷つくが、会のテーマソングであるジュリーの歌が耳に残って……。


★「まだまだ、いけます」
エピローグはジュリーのコンサート。敦子も、まどかも、千里も、束の間現実を忘れて少女に戻るーーー。


もうね、小説としては満点です。とくに家族を絡めたエピソードは秀逸。
だけど同じ女として、およそ20年後にやってくるらしい<更年期>の詳しい症状をはじめて知って、ちょっとブルーになってしまった。更年期だけじゃなくて、その年になれば自分の親も介護が必要になってる可能性が高いということ、(もし子供を産んでれば)子供もまだ大人になりきってない微妙な年代だということ、などなど考えるだけでパニックだ。
そしてまた、自分の母親がまさにその更年期であろうこと、でも離れて暮らしているせいでそれを支えてあげられないことに、悲しくなって。


というわけで、非常に個人的ではありますが、<更年期>のことを詳しく知れて勉強になった。
でも、そういう小説じゃありませんから!
誰にも訪れる困難な時代を、リアリティーたっぷりにかつユーモラスに描かれていて、ジュリーって誰だっけ?みたいな世代のわたしが読んでも楽しめる。年を取る、ということを正面から描いた作品だから、男の人が読んでも楽しんでもらえると断言できます。オススメです。