フィッシュストーリー(伊坂幸太郎)

フィッシュストーリー

フィッシュストーリー

伊坂幸太郎、初の短編集だ。表題の「フィッシュストーリー」とは<ホラ話>の意。「伊坂作品を彩る名傍役たちが巻き込まれる、新たな事件の数々ーーー。」と帯に書かれてるが、過去の作品の登場人物のななどまったく覚えてないので、普通に単独に楽しみました。逆に言えば過去の作品を何一つ読んでなくても、楽しめる作品だということで。


★「動物園のエンジン」
動物園に寝泊まりし、近隣のマンション建設反対運動に参加する<彼>の真意とは……?
深夜の動物園というシチュエーションがすごく好み。


★「サクリファイス
泥棒兼探偵の黒澤は、ある組織の依頼によってひとりの男を追い、山奥の村までやって来た。そこでは<こもり様>という奇妙な風習があって……?
面白くないわけじゃないけど、もうちょっと村の閉鎖感みたいのがあったほうが良かったかも。初対面の黒澤にみんなベラベラしゃべりすぎだー。


★「フィッシュストーリー」
売れないロックバンドのラストアルバムに残るなぞの空白時間……それが時空を超えて二人の女性を救う!
すごく可愛らしいストーリー。


★「ポテチ」
冴えない泥棒と、監督に嫌われ万年補欠のプロ野球選手。二人を繋ぐ糸とは……?
唯一の書き下ろし。「動物園のエンジン」と並んで、人情味たっぷりのラストです。


というわけでどれも伊坂幸太郎らしい洒落た会話に彩られ、ひねりの利いたライトな物語ばかりで。伊坂ファンならずとも気軽に楽しめる一作だと思います。