凍りのくじら (講談社ノベルス)(辻村深月/講談社NOVELS)★★★★☆

凍りのくじら (講談社ノベルス)

凍りのくじら (講談社ノベルス)

さすがに同じ作者の小説を一日に4冊読んだのは初めてかもな……。

根は「ドラえもん」好きな読書オタクだが、夜遊び仲間とも進学高のクラスメイトともそつなく馴染める主人公・理帆子。有名なフォトグラファーであり死の直前に姿を消した理帆子の父・光、理帆子とはどこまでも価値観が異なる母親、理帆子にモデルになってほしいと頼む別所、理帆子の元カレで徐々に狂気を帯びていく若尾、バカだが情に厚い美也……。

理帆子を中心とした人間関係は、静かに、ときに激しくうごめく。親という土台を失うことへの恐怖、どうしても断ち切れない弱さ、優越感を感じることで関係を持続する自分への嫌悪。理帆子の求めるものとは……?

いやーこの人はミステリの枠で納まる人ではないね。これまで読んだ作品すべて、単行本で通用するレベルだもの。読者を主人公に感情移入させるテクニックがある。かつ主人公を含めた人物描写が素晴らしい。構成も文句ないし、読者を驚かせる展開もしっかりしてるんだよね。若いのに、こんだけ完成されてるのが不思議なくらいです。

あと未読は『子どもたちは夜と遊ぶ』だけだ。寂しいなー。次作を早く出してほしい。