ボトルネック(米澤穂信)★★★★★
好きな作家の新刊ばかりで嬉しいこと。
この小説は……なんだろう。
ミステリやSFの要素も含んだ、なんとも鋭い斬れ味の哀しい青春小説だ。ラストの衝撃は、今も消化できずにいる。
この小説の一行目は好きです。
兄が死んだと聞いたとき、ぼくは恋したひとを弔っていた。
主人公のリョウは、二年前にノゾミが死んだ崖をはじめて訪れていた。そこへ兄の訃報の知らせが入るのだ。帰ろうとした瞬間、リョウは激しい目眩を覚える。そして気付けば自分の住む町に戻っていた。わけがわからぬまま家に戻ると、そこには見知らぬ少女がポッキーを食べていた……。
この小説を読むと、あぁ今の日本の青春小説はなんてヌルいんだろうと思わされる。時代が時代なせいもあるとは思うけど、こういう痛々しい青春小説はもっとあっていいはずだ。もっとも傷つきやすく、もっとも壊れやすい。その時代をこんなに鋭く描いた作品を、わたしははじめて読んだように思う。それでいてさすが米澤穂信、物語にひねりがきいていて、読ませる読ませる。
ハッピーな物語ではない。でもそれがなんだというのだろう。米澤作品の最高傑作だと思います。