生きてるだけで、愛(本谷由希子)★★★

生きてるだけで、愛

生きてるだけで、愛

こないだの芥川賞の候補作のひとつ。ちょっと気になっていたので初挑戦。
躁鬱と過眠に悩まされている、本当に生きてるだけで疲れそうな女の物語。
なるほどなるほど。「メッタ斬り」対談で豊崎由美が、松尾スズキの『クワイエットルーム〜』に似ていると指摘していたのにはうなずける。笑いのセンスもいいしね。ただ個人的にはもう「鬱病の主人公」っていう設定がげんなりしてしまう。ありがちだもの。着地点も目新しさはないし。上手いとは思うけど、枠内に収まってるかんじだ。でも妙なリアルさはあるので、読んでるこちらはどんどん気圧低下。仕事の息抜きにちょこちょこ読んでたのだが、見事に勤労意欲が失せ果てた。忙しい時期に読む本ではなかったと、深くため息。埋め合わせするかのような笑わせポイントも、すべては埋めきれなかったようだ。
併録の「あの明け方の」という短編のほうがまだ読んでて楽だったかな。でもこちらの主人公も疲れる女だ。松岡修造のことなんかで夜中にぶちぎれて家出なんてするんじゃありません。
興味深い作品ではあったけど、読むタイミングをわたしが間違えたようだ。でもこの作家に対する興味はまだ失われていない。全然違うタイプの小説とか出たら読んでみたいかな。いっそのことコミカル路線とか、どうでしょうか。芥川賞は獲れないかもしれないけど、さ。