嫌われ松子の一生


ついに見てきちゃいました。なにせ「下妻物語」が大の好みなのでハズレはないだろうと思いつつ、公開されてからはネットでの評判も上々で、かなり楽しみにしてたのだが……。
期待を大きく大きく上回る作品だった。ていうかすいません、泣きました。しかも涙ぐむとかのレベルじゃなくて、映画館であんなにボロボロと泣いたのは初めてかも知れない(しかもかなり我慢したうえで)。『セカチュー』を読んだときは「アホか!」と床に叩き付け、『タイタニック』を観たときは「話なげーよ」とイライラしてたわたしですが、泣くときゃ泣くのよ?


こっから先はネタバレご注意。
泣きのスイッチが入ったのは、中谷美紀演じる松子が妹(市川実日子)の死を知ってわっと泣き出すシーン。基本的に家族モノには弱いし、普通に泣けるシーンではあるけど、わたしは中谷美紀の演技に泣かされた気がした。そっからはいつでも涙スタンバイだったんだけど、現代のシーンで松子の最後の恋人である龍くん(伊勢谷友介)が警察と川でもみ合ってるシーン、あそこもかなりじわじわ来た。そこにあのシーンをつなげるのかと。あとは松子の人生フラッシュバックなラストもじわじわ来っぱなしでした。
それにしても中島哲也監督はスゴイ。こだわりがハンパない。とくに色彩に関してここまでこだわってるのは鈴木清順レベルではないか(『陽炎座』をちょっと思い出した)。そして同じくらいにこだわってるのが音楽。作中かなり多くの音楽が使われてるが、ひとつひとつがシーンや松子の心情とがっちりリンクしてて、単に映画を彩る背景のアイテムではなくなっている。でもでしゃばってるわけじゃなくて見事に物語と融合してて、そこらへんのバランス感覚が素晴らしいと思うのだ。
役者陣も最高。中谷美紀はこれまであまり個性の見えない女優であったような気がするのだが、この作品では彼女の中のものすごい根性を感じた。松子を愛した男たち、谷原章介、宮藤勘九郎劇団ひとり武田真治荒川良々というラインナップもいい。武田真治を除いて妙にみんな顔が昭和テイストなんだもん(笑)。とくに谷原章介はコメディーの素質あると見た。松子の家族は父親に柄本明、弟に香川照之(兄にしか見えなかったけど)、妹に市川実日子だったのだが、みんな演技達者で。とくに柄本明の昭和のお父さんぶりはすばらしかった。そのほかもベテラン俳優やら芸人やら(個人的に大久保さんがかなりツボ)ミュージシャンやら個性的な人たちがたくさん出演してて楽しかった。ただちょっと気になったのは、現代パートの主人公である瑛太の恋人役である柴崎コウか。悪いとかじゃ全然ないんだけど、中谷美紀と顔かぶり過ぎ。柴崎コウの出演シーンが多かったら混同してるかもってくらいに、妙に顔立ちといい雰囲気といいそっくりなんだよねぇ。まぁいいけど。
救いのない松子の人生。確かにやり切れなさはあるけど、圧倒される。ピュアで馬鹿で一所懸命な人生に。「なんで!?」と叫びながらもすべてを抱えて生きていく松子の存在そのものに感動したのかもしれない。あとはひたすらスクリーンからあふれる作り手のパワー。それに尽きる気がします。
DVD出たらもちろん買いますよ〜。