ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)(アゴタ・クリストフ)★★★★★

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

先日読んだ『悪童日記』の続編です。3部作の2作目ですね。

戦争は終わった。過酷な時代を生き延びた双子の兄弟の一人は国境を越えて向こうの国へ。一人はおばあちゃんの家がある故国に留まり、別れた兄弟のために手記を書き続ける。厳しい新体制が支配する国で、彼がなにを求め、どう生きたかを伝えるために―強烈な印象を残した『悪童日記』の待望の続篇。主人公と彼を取り巻く多彩な人物の物語を通して、愛と絶望の深さをどこまでも透明に描いて全世界の共感を呼んだ話題作。

悪童日記』の衝撃のラスト直後、双子の兄弟<ぼくら>は、ついに名前を持つ。そして国に残った少年のリュカがこの物語の主人公だ。彼は、近親相姦によって生まれた赤ん坊を抱えて路頭に迷った女性を自宅に住まわせる一方、不倫に疲れた図書館司書の女性にストーカーばりに付きまとい……。
二人が一人になっても怖いのよ。語り部がもうどうしようもないくらい歪んでるから、読み手としては足場がなくてどうにも不安がつきまとう。前作に比べるとまともな生活を送っているように見えるんだけど、全然そんなことなくて、ふとした瞬間にみせる狂気が怖くてたまらない。
そしてこのラスト。前作に引き続いてというか、それ以上の足払いをくらってしまいました。基本的に低いハードルでもひっかかるわたしなんて、そこまでは疑ってなかったよ。そうか。そうなのか。
とにもかくにも、ものすごく、純度の高いエンタメだ。有名な作品らしいのであちこちでこの作品に対する深い「読み」を読ませてもらったのだけど、でもやっぱ何よりもこの小説は読者を楽しませることに重点を置いてると思う。じゃないと二作続けてこんなラスト用意しないって。ま、でもまだ3作目が残ってますからね。それを読んでからまたじっくり考えたいです。