ページをめくれば (奇想コレクション)(ゼナ・ヘンダースン)★★★★★

ページをめくれば (奇想コレクション)

ページをめくれば (奇想コレクション)

この人の作品を読むのは初めて。主に1950年代から60年代にかけて活躍したアメリカの女流作家らしい。解説の中村融氏によれば、<ブラッドベリスタージョンに近い資質の持ち主であり、SFにとどまらない短編の名手>らしい。

人工衛星の打ち上げに沸く時代、発展にとり残された小さな学校にひとりの男の子が転校してきた…本邦初訳の「ピープル」シリーズ「忘れられないこと」をはじめ、デビュー作「おいで、ワゴン!」、異星人との交流を描いたハート・ウォーミングな物語「いちばん近い学校」、過去が見える眼をもつ女性がみた世界「鏡にて見るごとく―おぼろげに」他、全11篇を収録。

とても良かったです。フェミニンな視点が優しくて読み心地がいいのだけど、一方でホラー的な側面も強くて、引き込まれてしまう。ラストは切なかったりハッピーだったりするのだけど、どちらにしてもとても心を揺すぶられる。
著者が教師だったためか、子供に関する作品が多いのだけど、その中でも子供の信じる力が生み出した不思議な現象を描いた「しーっ!」「信じる子」「おいで、ワゴン!」がとても好き。ノンSFだけど「先生、知ってる?」も悲しいラストが印象的だ。表題作も切ない余韻がたまらないし、男社会をストレートに皮肉った「小委員会」も予定調和ながらいい物語だと思う。ま、どれもこれも良かったって話ですが。


それにしても奇想コレクションはやはりあなどれませんね。これまで読んだのは『夜更けのエントロピー』(ダン・シモンズ)と『どんがらがん』(アヴラム・デイヴィッドスン)と本書の3冊だけだけど、既刊の残り5冊もコンプリートしたくなってきました。今後は同シリーズにイーガンやウィリスも加えられるようなので、そちらも楽しみ!