ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)(レイ・ブラッドベリ/創元SF文庫)★★★★

ウは宇宙船のウ【新版】 (創元SF文庫)
ブラッドベリ初挑戦です。この短編集はヤングアダルト向けらしく、初めて読むには良かったかも。
一番面白かったのが「霜と炎」。
きっかり8日間で早送りのように成長し老い、そして人生を終える世界に生まれた少年・シム。めぐるましく短い人生を生きることだけで精一杯ななかで、普通の人たちからは離れてこの狂った世界を元に戻そうと研究を続ける科学者たちのもとにシムは向かった…。
短すぎるタイムリミットによる緊張感と蓄積された深い絶望のなかで、頼りなく細い光がシムを照らす。夢中で読んでしまった。
いかにもSFらしいものもあれば、「宇宙船」や「いちご色の窓」のようなあたたかい家族小説もあり、表題作や「駆けまわる夏の足音」のようにノスタルジーたっぷりな少年小説もあって、ブラッドベリという作家の世界の広さを感じた。描写も美しいしね。とくに「いちご色の窓」の冒頭の色ガラス越しの世界が描かれるあたりはしびれました。