小指の先の天使 (ハヤカワ文庫JA)(神林長平/ハヤカワ文庫)★★★★★

小指の先の天使 (ハヤカワ文庫JA)
なんでだろう。これ読み始めるまで梶尾真治の短編集だと思い込んでた。なんでだ? 以前id:seiitiさんに勧められてこの人の作品も読もう読もうと思ってたんで結果オーライだけど。というわけで、日本SF界の大御所に初挑戦だ。

恋人同士がたがいに触れ合えないとしたら、ふたりはそんな世界をあきらめるだろうか? あるいは仮想世界の動物園でキリンが鳩を食べたとしたら、それは、現実に住まう神の御業なのだろうか? あるいは、仮想世界で生涯を終えた者がいて、果たしてその魂はどこへ向かうのだろうか? 人間の意識と神についての思索が、現実と仮想のあいだを往還するーー20年間の歳月を費やした、神林長平の原点にして到達点たる連作集。

凄いですね。
最初に収録されてる「抱いて熱く」でいきなり吸い込まれた気がする。天変地異みたいなことが起こってほとんどの人間が死んでしまって、そして何故か人間同士が触れ合えば瞬時に炎上して死んでしまう世界。この設定にしびれました。悲しすぎる…。
そして肉体を捨てた人間たちの仮想世界・超生システム内の小さな異変から恐ろしい仮説が浮かびあがる「なんと清浄な街」は、SF+ミステリ+心理ホラーってかんじで、短編とは思えない濃さ!
他4編もそれぞれに独特で面白くて、解説で桜庭一樹が指摘してるように、収録作品の執筆時期に二十年以上の開きがあるとは驚きだ。時代によって古びないレベルのものを、デビュー当時から書いてる人なんだなぁ。
ここに収められた短編は共通して「リアルとは何か」ということを突き止めようとしている感じがした。設定はめちゃめちゃSFSFしてても、その答えは「肉体である」と読んでしまうのは浅はかかしらん。


とにもかくにも面白うございました。次は長編を読んでみたい。