クラッシュ・ブレイズ パンドラの檻 (C・NOVELSファンタジア)(茅田砂胡/中央公論新社)<36>

クラッシュ・ブレイズ パンドラの檻 (C・NOVELSファンタジア)
来ました<クラッシュ・ブレイズ>シリーズ最新刊! 今回の主人公は海賊ことケリー、そして無理矢理巻き込まれたレティシアとヴァンツァー。意外な三人組だが実はある共通点で結ばれていたのね。
なぜか強姦罪の濡れ衣を着せられたケリー。どうやら単純な事件でないと見抜いたケリーは、おとなしく敵の陣地に連れ込まれる。もちろんそこで黙っちゃいられないのが女王ことジャスミン。だがこの事件がケリーの悲惨な過去に関わってることを知って意外な行動に出るのだが…!?
やっぱいいね茅田砂胡は! なーんにも考えずに没頭して楽しめるもんね。あっという間に読めちゃうし。でもわたしは前作の『ヴェロニカ〜』が出た頃に茅田作品を一気読みしてたので、一日に一作しか読めないっていうのが初めて。この人の作品は勢いに乗ってどんどん次が読みたくなるんだよねぇ。でも「次」がないので、帰ってからちょっと前の作品をぱらぱら読み返したりしました…。
個人的な本作の読みどころはやっぱレティとヴァンツァー、二人の本職ぶりを堪能できるところだろう。二人の本職っていうのは「殺人者」なのだから、それを喜んでるわたしもどうかとは思うが。だってデルフィニアでは暗殺一族として読むものを惑わすほどに見事な仕事ぶりだったっていうのに、こちらの世界に来てからはときおり事件に巻き込まれるとはいえ、基本的には真面目な学生さんになっちゃってるんだもの。これはこれで親しみやすくていいキャラになっちゃったのだが、たまにはぎらぎらした昔の二人も見たいじゃない。そういう意味では存分に楽しませてもらいました。ちなみに今回は金銀黒の天使はほとんどお休み。これまでのクラッシュ同様、わりとすっきりとしたお話でした。
それにしても、もともとこの世界の住人でトラブル引き寄せ型である怪獣夫婦はさておき、<デルフィニア物語>出身の超人系メンバーはかなり特殊な状況でないとなかなか本気で活躍しないなぁ。科学文明頼りっぱなしの子供たちとともに未開の星に残された前作のリィとシェラのように。今後こちらの世界でデルフィニアメンバーが真剣に戦わないといけないほど強い相手が出てくれば面白いんだけど。
あとがきによれば、このシリーズは一回お休み。次はやはり<デルフィニア>の外伝だそうで。ただし<王妃>は出てこないとのこと。なぜそこを強調して告知するかといえば、<王>と<王妃>の再会を期待する人が多いのではないかという著者の配慮でした。ごめんなさい、もちろん期待してました…。だってどんどんシリーズをつなげちゃって融合させてしまうという豪腕な作者だからこそ、あるかも…と期待を抱いてしまったのですよ。このあとがきによれば、舞台はデルッフィニアで<王>と<王妃>以外の主要キャラクターが中心に描かれるよう。誰だ誰だ。読み返したくなってきたぞ。