リアル 5 (ヤングジャンプコミックス)(井上雄彦/集英社)<33>

リアル 5 (ヤングジャンプコミックス)
漫画については感想を書いたり書かなかったり曖昧にしてたんだけど、今月から全部書いちゃうことにします。月内に読んだ作品にもカウントしちゃえ。
売り上げに恥じないクオリティーの作品を出し続ける井上雄彦。「スラムダンク」であまりの人気を得ながらもそこにとどまらず新しい世界にチャレンジするこの作家がとても大好き。そしてわたしは、大人気の「バガボンド」に隠れるようにして一年に一度刊行される、この車椅子バスケの大ファンである。(実はいつか腰を据えて読むことがあるだろうと思って立ち読みで済ませてきた「バガボンド」は途中で話を見失ってしまったのだが…)
この物語の主人公は同世代の3人の男の子だ。
まずは野宮。見た目は完全にヤクザだが実は心からバスケを愛する高校生…だったがナンパした女の子を乗せたバイクfで事故を起こす。自身は無事回復できたが、一緒に乗せていた女の子は歩けない体になってしまった。結局、野宮は高校も退学。バスケも出来ず先の見えない人生にイライラしていた。
そして戸川。中学生のころは都内きってのスプリンターであったが、骨の病気によって片足を失ってしまう。引きこもる生活を激変させたのは、車椅子バスケだった。だがエゴの強い戸川はチームメイトと摩擦を起こし、チームから離れてしまう。
バスケがしたいのにする場所がない…そんな二人が出会うシーンから物語は動き出す。
そして最後の主人公・高橋は、野宮のもとクラスメート。成績優秀、バスケ部主将、ルックスOK…というわけで人生<Aランク>だった彼が交通事故によって、下半身不随の体になってしまう。すべてを見下ろしてきた彼にとって受け入れることの出来ない過酷な現実がまっていた。
4巻は戸川清治の<再生>の物語が主軸だったのだが(涙ぐむストーリーだった)、この5巻はわりとバランスよく3人のタタカイが描かれる。戸川は相変わらずチームメイトと上手くいかないなか、力強いチームメイトが登場する。野宮は空回りしながらも自分が歩けなくさせてしまった夏美に会いに長野まで行く。高橋は現状を受け入れながらも過酷なリハビリに意欲を失い…!? ひたすら前進し続ける戸川、やっとはじめの一歩を踏み出した野宮、いまだ停滞している高橋。
この卷で一番のシーンはやっぱ、野宮が夏美とともに挑む「二度目」のドライブだろう。このドライブと翌日の散歩のシーンは、野宮の成長と夏美のほのかな気遣いが感じられて、とてもハッピーだ。作中ではこれまでほとんど口を開くことのなかった夏美が、こんなヤツで本当に良かった。そしてもうひとつの山場は、戸川が車椅子バスケの世界に入るきっかけとなったヤマとの関係だろう。すでに腕を上げることさえできなくなったヤマと戸川の間で交わされるメールが、たまらなく切ない。
続きが気になりますねぇ。3人の世界がどう交わるのかと…。