ノー・セカンドチャンス 上巻 (ランダムハウス講談社文庫) ノー・セカンドチャンス 下巻 (ランダムハウス講談社文庫)(ハーラン・コーベン/ランダムハウス講談社文庫)<8-9>

ノー・セカンドチャンス 上巻 (ランダムハウス講談社文庫) ノー・セカンドチャンス 下巻 (ランダムハウス講談社文庫)
今月創刊のランダムハウス講談社文庫。今までの講談社の翻訳作品がアメリカのベストセラー系ミステリばっかりだったのに対して、こちらはわりと作品に幅のあるラインナップ。…とここまで書いて調べてみたら、これは講談社から出てるわけじゃないのね。講談社とニューヨークのランダムハウスという会社の共同出資による、ランダムハウス講談社という会社が出した文庫シリーズらしい。なんとなく装丁に惹かれて買ってしまったけど、こいつも薄いくせに二冊分冊であわせて1530円だ!どうなってる講談社!!


ま、それはさておき中身ですが。
医師のマークは自宅で襲われ瀕死の状態から二週間後、意識を取り戻す。ところが目を覚ましてまず刑事から聞かされたことは、妻は死亡、生後六ヶ月の娘・タラは行方不明という衝撃の事実だった。娘を捜し出そうと無理矢理退院したマークに、犯人から身代金要求の文書が届く。犯人の要求通り金を渡したが、警察の介入に気付いた犯人側はタラを返さなかったー。そして一年半後、再び犯人からの脅迫状が届く。タラは生きているのかー!?
読みやすいし、とくにサスペンス的な側面はリーダビリティが高い。マークの昔の恋人でもとFBI捜査官のレイチェルが絡んでくるあたりからがぜん面白くなるし。ラストのどんでん返しもなかなかいいし。でもなんか今ひとつ登場人物たちがうまく絡み合ってない気がするんだよね。たぶん主人公であり語り部でもあるこのマークの視野が狭いせいなんだろうな。まわりの人間に対してあまりにも注意を払わなすぎる。まぁこの人は探偵でも警察でもないし、自分は殺されかけたし妻は殺されたし娘は誘拐されてるし、他のことに気を使ってられないのは逆にリアリティはあるけども。でもあまりに目の前のことにとらわれすぎていて、自分で考えることを放棄してる。ミステリのなかの探偵役としては役目を果たしてないから、全体的に唐突さが目につく。真犯人の意外性はあったけど、ここまで紆余曲折を経なくてももっとはやく手に入れることが出来た事実をもとにしての断定だからなぁ。
繰り返すけど、読みやすいしリーダビリティが高いから一気読みできる。でも読み終わったあとなんとなく釈然としないものを感じるのもまた事実だ。まわりにたいしてあまりに無自覚に無関心なマークが語り部であることが、問題の原点。亡くなった妻に対しても行方知れずの娘に対しても、かわいそうなほどに心配してるけど、でもそれも基本的には「自分ありき」なかんじが否めない。だからのめり込めないんだよね。もしかしたら作者も無意識で書いてるのかも…と思わされた。だとしたらなおたち悪いけど…。