2005年のロケットボーイズ(五十嵐貴久/双葉社)

2005年のロケットボーイズ
「『1985年の奇跡』の著者が贈る本邦初の理系青春小説」という帯の文句に惹かれてなんとなく購入。この人の作品は「1985〜」しか読んでないんだけどなかなかいい青春小説だったし。
主人公のカジシンは私立の工業高校に通うやる気のない高校生。飲酒がばれての停学明け、教師から『第十三回キューブサット設計コンテスト』に出場するよう強制される。実は東京都からの要請を受けて誰か出場させなくてはならなくなったのだが優秀な人間はすべて鳥人間部に所属するという一風変わった学校であったためにだれも目星がつかず、カジシンに押し付けられてしまったのだ。とはいえカジシンは理数系の科目が大の苦手で「キューブサット」が何であるかもよくわからない状態。あわてて友達のネットワークをつたって学年一の秀才<大先生>に賞金をちらつかせて頼み込むのだが…。
はっきりいってわたしもカジシンと同じく理数系が全然ダメ。だからキューブサットがなんなのかもこの本で知ったのだが、キューブサットとはロケットから放つ人工衛星のようなもの…らしい。それがいったい何の役に立つのかはよくわかってないわけなんだけども。
そんなキューブサットの設計図を約束通り大先生はつくりあげてくる。それをカジシンは学校に渡してほっとしたのもつかの間、なんとコンテストでその設計図が準優勝をとってしまうのである。そしてさらに実物を制作しなければならないハメに…ヒキの弱い男・ゴタンダ、天才スロッター・ドラゴン、体力はピカイチ・ダブリの翔さん、ずば抜けた頭脳を持つ引きこもり・レインマン電気屋の娘・彩子、カジシンの祖父で町工場の腕利き・ジジィを巻き込んでハチャメチャなプロジェクトが幕を開けるー
「1985年〜」が好きな読者は間違いなく楽しんで読める作品。ふくらんだりしぼんだりはじけたりする彼らの夢がとてもリアルに感じられる。変わり者なキャラ達がいつしかチームとしてまとまっていくあたりは、読んでいるこちらも楽しい。今日は奇しくもスペースシャトルディスカバリー>の打ち上げ日。なんとなく嬉しくて、普段興味ないくせに上手くいくといいなと思った。