ハミザベス (集英社文庫)(栗田有起/集英社文庫)

ハミザベス (集英社文庫)
この人の作品読むのは初めて。話題の作家なので間違いなく買ってたと思うけど、いしいしんじ江國香織小川洋子角田光代柴田元幸らの名前とともに「私たち、栗田有起作品に夢中です。」と書かれた帯にも後押しされた。
顔も知らない父親から不動産を相続することになったまちる。なぜかついでに一匹のハムスターの世話をすることに。相続の手続きをてきぱきとこなす亡き父の知人・あかつき、更年期障害に悩む母・梅子、幼なじみでもと恋人の美容師・彰、そして<ハミザベス>と名付けたハムスター…彼らと過ごす時間を中心に、まちるの日常と思い出が鮮やかに描かれる短編「ハミザベス」。すばる文学賞受賞作。
七つも年が離れているのに双子のようにそっくりで、地味に堅実に生きてきた姉妹。堅実でしっかりものの姉はいきなり看護婦を辞めてSMの女王になった。そして妹はなぜか髪をアフロにしてみた。なぜだかはわからない…「豆姉妹」。
この二編を収録した短編集。不思議な味わい。そしてじんわりとあたたかく広がる読後感。どこか冷めたようなたんたんとした文章が静かな印象を与えるけど、なぜか登場人物たちの心の動きが知りたくて知りたくて、のめり込んでしまう。文章のリズムもいいし。上手いんだねこの人。
いしいしんじの解説より

「わからないもの」の表面に、ひたすら丹念に、言葉を貼りつめる。その言葉の連なりは、天才の針子が縫ったドレスのように、「わからないもの」の輪郭を、この上なく忠実になぞっていく。読者は、精緻に選ばれた小説の言葉を、息をつめてたどりながら、同時に、言葉の向こう側に潜む「わからないもの」の輪郭を、意識せず、視線で追いかけることになる。

上手く言葉にできないから解説にあずけちゃおうかと思って引用したものの、これだけでは余計に意味不明かも。でも読んだあとに見るとこの文章がすごく的を得ていると感じるのだ。(関係ないけど<天才の針子が縫ったドレスのように>ってすごくいしいしんじが発するに似合う表現だ)
あまり期待せずに買ったのに、予想以上に楽しませてもらいました。他の作品も読まねば〜。