花狂い (ハルキ文庫)(広谷鏡子/ハルキ文庫)

花狂い (ハルキ文庫)
この人の本を読むのは初めて。かなり前に「本の雑誌」で北上次郎がオススメしてて読みたいなぁと思ったのだが忘れてしばらくたったうちに文庫になったもの。

「奥さんに男ができたんだ」…六十六歳の大学教授・治夫は、元教え子の愛人にそう断言され、最近きれいになり、性に対して積極的になってきた妻に、疑いと嫉妬を燃やし始める。一方、五十九歳の妻は、四十年ぶりに同級生の男性と出会い、恋におちる。夫婦は十年ぶりにセックスに挑むのだが……。初老の男女の性と生を、リアルに切実に描き、各紙誌で大絶賛された恋愛長編、待望の文庫化。

ふぉぉ…濃いな。全然想像できない世界なので共感はできないが、すごく面白かった。治夫のアホさ加減は、最後の手紙に至ってはかわいそうなほどだ。教え子に手を出すことに何の罪悪感も抱いてないくせに、妻には貞淑を求める。愛人と妻が同じ「女」であることを理解してない。男ってこんなもんなのかなぁ。それに驚くほどに鈍感だ。愛人に「妻とセックスしたい」なんて相談するし、「濡れないならゼリー使えば」と買って渡してくれる愛人が自分への興味を失ってることにつゆとも気付いてない。馬鹿だねぇほんとに。地位と外見だけで女に不自由しなかった男は年を取るとこうなるのか…と考えてしまいました。そして妻・美春の母親が自分も同じような苦しみを味わったため、同じ「女」として美春を受け入れる優しさがじんときた。この人のほかの作品もぜひ読んでみたい。